ハリセン、デコピン、また脱線

翌朝、和彦は久し振りにすっきりした気分で目が覚め、軽い足取りで会社に出社した。
「あれ?
 メンテナンスするプログラムって1本じゃなかったっけ…。」
和彦は会社のPCを見て呟いた。
和彦は、普段は不具合が発生したプログラムのメンテナンスを担当していた。
和彦は技術者としての腕は確かで、その点において長くいた客先では一目置かれていたが、自社では全くと言っていいほど評価されていなかった。
その日もプログラムのメンテナンス依頼がワークフローで回って来たのだが、昨日の予定では1本のところ、今日になって2本に増えていた。
1本はいつものように不具合の事象を起こしたプログラムで、不具合が発生した時の画面のハードコピーが付いていたが、もう一本は、処理速度を上げるチューニングの依頼だった。
「え?
 プログラムのチューニング?
 最近やっていなかったな…。」
和彦は、そういうチューニング作業が好きで、いつもの不具合を起こしたプログラムのメンテナンスを半日でとっと終わらせ、和彦はチューニング作業の方に入った。
「うえ~、何んだ、このプログラムは。
 インデントも滅茶苦茶で、汚ちゃないコーディングだな…。
何が何だかわかんないじゃないか。
しかも、コメントもないし。
で、チューニングの内容は…。」
指示書を見ると、そのプログラムはサブルーチンの一つで、処理時間がかかりすぎるので、期待値、合否の閾値は、今より半分の時間で終了することと書かれていた。
プログラミング言語も見たことがなかったが、Ⅽ言語に近く、また、オンラインヘルプのURLが付いていて、自席のパソコンから見ることが出来た。
「処理時間か。
 だいたい処理時間がかかるのはI/Oが多く発生しているのが原因なんだよな…。
 こんな汚い組み方だと無駄な処理も多いだろうな…。」
そう言いながらプログラムの解析に没頭していた和彦は時間を忘れていた。

「もしもし、時間外延長申請を受け付けに提出しましたか?」
守衛の声に気が付き、時計を見ると23時をさしていた。
和彦の会社の警備は23時以降とどまる場合は、届け出をしなければいけない規則だった。
「うわ、もう、こんな時間?
 帰ります、帰ります」
そう言って、和彦は荷物を慌てて鞄に詰め込み、足早に会社を出た。
「はあ、これで帰ると0時を回るな…。
 今日は、ゲームが出来ないな。
 エイミー、ターニャ、今日は会えないな…残念…。」

翌日も、和彦は朝から晩までプログラムの解析に夢中になっていた。
「おい、小日向君。
 昨日も遅くまでやっていたみたいだけど、残業代はなしだからね。
 終業時間も定時でつけるように。」
「はい…。」
「まったく、どこの部署の仕事だ?」
そう言って和彦の上司は依頼元の情報を参照すると、眉を曇らせた
依頼元は新しくできた営業部で、ユーザー先は社内秘となっていた。
さらに、この作業は最重要プロジェクトの一環で、この作業が済むまでは、和彦に何も作業を入れてはいけないという厳命付きだった。
「ふーん、あの部署か…。
 ま、いいか。」
和彦の上司は、他の部署の仕事ということで和彦の面倒を見なくて済むので直ぐに興味を無くしたように離れていった。

プログラムの解析に夢中になっていた時、和彦の脳裏にあることがよぎった。
「そう言えば、ターニャも連射するとき、次の射撃まで少しタイムラグがある気がするな。
 まあ、女の子だからかな…。」
和彦が夜も更けるのも忘れ夢中になってプログラムを解析している時、和彦のスマートフォンの画面が明るくなり、何かが動き出しているようだった。
「…ねえ、ねえ、ハリセンの次に、このデコピンってなんだろう?」
「え?
 ああ、検索履歴に残っていたのね。
 どれどれ…。」
「ふむふむ、罰ゲームだって。」
「え?
 こっちは、男女間で仲良くなる技って書いてあるよ。
 『もう、なになにちゃんたら~』って言いながらやるみたいよ。」
「ふ~ん。
 なになに、中指の指先を親指の腹につけ、円を作るようににして、中指に力を入れる。
 そして、相手のおでこの真ん中に中指の先が当たるように近づける?
 ねえ、ちょっと来て。」
「なあに?」
「ちょっと試してみるの。
 そのままにしててね。
 そして、中指が跳ねるように力を入れて、ギリギリのところで親指から滑らせて勢いよく。」
バチン!!
「ひ……。」
「くぅ~…。」
「おでこが…」
「中指が…」
痛い―!!
「お、おそるべし、デコピン!」
「う、うん。」
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電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

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