ハリセン

<今回は、いつもの2話分の長さです。
 お楽しみください。>

うな垂れたまま動かない和彦を気遣ってか、ターニャが優しく声をかける。
「マスター、どうかしましたか?」
その声に和彦は誰にも気づかれないように顔を掻くようにして、そっと涙を拭いた。
「さて、今日はこの位にしておくよ。
 明日も平日で、仕事もあるし。」
「そうですか。
 仕方ないですね。
 現実世界でのお仕事に差しさわりがあるといけませんし。」
エイミーは、心配そうな顔をしていた。

(ん?
 でも、なんで俺はしんみりしてんだ?
 家庭的?
 ターニャやユッカが僕の子供?
 エイミーは?
 違うだろ。
 俺は、まだ…)
和彦はそう思いながら頭を振った。
「……。」
エイミーやターニャ、ユッカは、和彦が何をしているのか不思議そうに見ていた。
「違う!
 違うぞ!!
 まだまだ、枯れてなんかいないから。
 エイミーにターニャやユッカをはべらかせて、ハーレムを。」
その時、和彦の肩を誰かがトントンと叩いた。

和彦は“はっ”として見ると、ターニャとユッカが苦笑いをしながら、少し離れた場所を顎でしゃくって見せた。
「え?」
和彦は、ターニャたちが示した方向を見ると、4、5mほど離れたところにエイミーがうつむき肩を震わせながら立っていた。
エイミーからは怒りのオーラがはっきりと見えていた。
「あ、あの、エイミーさん?」
和彦はおどおどしながらエイミーに話しかける。
「しんみりしていたので心配していたのに。
 何が私たちをはべらせてハーレムですって?!」
「え?」
和彦は心の中でしか言っていないと思っていた。
「マスター、全部口に出してましたよ。」
ターニャが無表情で答える。
「え?
 ええー!」
「まったく、だから男の人って信じられないわ。」
エイミーが顔を上げると怒りで顔を赤くし、右手に何かを持っていた。
「エイミーさん?
 な、何を持っているの?」
エイミーは無言で手に持っているものを振り上げた。
「え?
 それって、もしかして、ハリセン?
 それにしては、大きすぎるんじゃない?」
和彦はエイミーの持っているものが大きなハリセンであることを認識した。
「ターニャ、ユッカ、いい?」
はーい!
そう言ってターニャとユッカは和彦の両腕掴んだまま立ち上がらせた。
「え?」
和彦は次に何をされるか、最終的にどうなるかを容易に想像できていた。
その想像の通り、ターニャとユッカは和彦の腕を掴んだまま、「せーの!」という掛け声で和彦をエイミーの方に勢いよく送り出した。
「わわ!」
和彦は、勢いでエイミーの方に走り出すと、エイミーは大きなハリセンを振りかぶって待っていた。
マスター、目を覚ましなさい!!
バシーン!
大きな音がして、エイミーのハリセンが和彦の顔を打ち抜いた。
その瞬間、和彦は仮想空間から消え、現実世界に戻っていった。

和彦が仮想空間からいなくなったのを確認して、エイミーは「ふぅ」とため息をついた
「ねえ、エイミーちゃん、マスター、痛かったんじゃない?」
「音も凄かったし。
 モニターに危害を加えたらいけないんじゃない?」
ユッカとターニャが心配そうにエイミーを見ると、エイミーは二人を“キッ”と睨んだ。
「だいたい、あなた達がマスターに引っ付くから、マスターおかしくなったのよ。」
そう言って、エイミーはターニャとユッカの頭をハリセンで順に叩いた。
バシンバシンと部屋中に大きな音が響き、ターニャとユッカは叩かれた頭を抑えた。

「イタ―って?
 あれ?
 痛くない?」
「本当、どうして?」
ターニャとユッカが不思議そうな顔をするとエイミーはケラケラと笑い出した。
「このハリセン、音がすごいだけで、全く痛くないのよ。
 そういうお約束。」
「なんだ、そうなんだ。」
「マスターも、わかってくれているわよ。
 たまには私も悪ふざけ♪」
おおー
「マスター、優しくていい人なんだけど、たまに変なスイッチが入るのよね。」
「うんうん。
 でも、そこがいいんでしょ?」
「ええ…。
 って、こら、二人とも何よ!」
「わ、エイミーちゃんが怒った!」
「違うわ、赤くなったのよ。」
「こ、こらー、二人とも待ちなさい。
 ハリセンよー。」
きゃー

和彦は、「わっ!」と声を上げると勢いよく布団から起き上がった。
そして、自分の部屋に戻っているがわかると、器具を外しながら鼻の頭を指でかいた。
「そうだよな。
 しんみりするのは、もっともっと年を取ってからにしよう。
 今はまだまだ楽しまなくっちゃ。
 エイミーも、合わせてくれて“ツッコミ”をありがとう。
 しかし、エイミーもよくハリセンなんていうギャグの小道具を出して来たなぁ。」
和彦は、エイミーが気持ちよく和彦の気持ちに合わせてくれたのがわかっていた。
「それに我ながら、よく昔のマンガみたいに“ハーレム”なんて言ったもんだな。
 でも、半分は…、ふっ、ふっ、ふっ。
 まだまだ、いくぜー!!」
和彦は何かを想像してか、にやけ顔になっていた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

電猫カレンダー
06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
よろしくお願いします

FC2Blog Ranking

委員会に訪問された方
電猫お絵描帳
検索フォーム
リンク