マスターと呼ばれた男

和彦は、女性に洋服が薔薇の香りがするんだと言われ、何となく部屋の中に薔薇の香が漂ってきた気がし始めた。
鼻をピクつかせている和彦を後目に、女性は、部屋の端から和彦に向かって歩み寄ってきた。

「さてと、この部屋、少し暗すぎません?
もう少し、明るくしていいですか?」
和彦は黙って頷いた。
女性は、手に持っているリモコンらしきものを操作した。
すると、先ほどまでの黄色の薄暗い室内光が、白っぽい光に変わった。
それと同時に、目を通すことなく埃まみれになっていた、いや、埃まみれになっていたと思われた本棚の書物が、つい今しがたまで読まれていた様に、埃もなく整理整頓されている生き生きとした書物に見えてきた。
「いかがですか?」
女性の口から明るい若々しい声がした。
和彦は、女性をまじまじとみた。

そこには、先ほどの印象からほど遠い、少し小柄だが、朗らかで快活な感じのする若い女性が立っていた。
服装は、最初に見た通り、メイド喫茶のメイドの様に薄く露出部分が多いメイド服ではなく、露出部分が少ない重厚な、よく古い映画に出てくるような濃紺のメイド服を着ていた。
ただ、体形に合わせ仕立てられているのかぴったりとしており、グラマラスな胸、適度にくびれたウエスト、ロングスカート越しだが形の良いふっくらとしたヒップラインというシルエットが見て取れた。
また、髪は、ダークブラウンの少し長めのボブで、カチューシャのようなメイドキャップをつけていた。
顔は、小顔で少し釣り上がった目、形のいい鼻と薄い唇、眉などはきちんと手入れがされており、理知的な印象を持つ顔立ちの上、化粧も濃くなく、センスの良さが感じられた。
何よりも、洋服からのバラの香りだけではなく、若い香り立つような瑞々しい香りがしていた。

女性は、部屋の中央にたたずみ、呆然と女性のことを眺めている和彦のすぐ近くで歩みを止め、部屋を見渡し、また、手を横に広げたり、スカートの裾をつまんでひらめかしたり、本棚のガラスに映る自分の後姿をながめたりして自分の衣装をしげしげと観察していた。
「うん、なかなか良い趣味のようですね。」
女性は頷くと、和彦と目を合わせた。
「部屋も落ち着いていて、色合いも落ち着いているし、洋服の趣味もよろしいようで。」
そう言うと、今一度自分のメイド服を眺めた。
「え?
 だって、これってゲームの中だろ?」
和彦は不思議そうに尋ねた。

和彦には、ここがゲームの中とは到底思えなかった。
「ええ、ゲームですが、これはマスターが思った印象を具体化したものです。」
「え?
 マスター?
 僕のこと?」
女性は、笑みを浮かべて頷いた。
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電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

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