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電猫は怒る

次の日の朝、和彦は重い気分で目を開けた。
ゲームと分かっていても、ターニャとユッカの倒れた姿が目に浮かび、どうしても気が晴れなかった。
それでも、布団から這い出し、何気なしにゲームチューナーの方を見ると、見慣れない文字が流れていた。

『It's okay! Both of you have become energetic!(大丈夫ですよ!二人とも元気になりました!)』

(そっかぁ、元気になったか。)
和彦は、何か心が晴れた気分になった。

会社に行くと、すぐに騒ぎが起こった。
和彦がリーダーとして名前を貸していたプロジェクトで納品したシステムに一部、不具合が見つかり、ユーザー先から強いクレームが入っていたのだった。
最初は、和彦を小馬鹿にしていたシステムと営業の若手が対応策を考えていたところに、営業部長の陣内が怒鳴り込んできた。
陣内は、40代前半で濃い顔立ちに、黒縁のメガネをかけ、脂ぎった顔の小太りの男で、上には徹底的に平伏する反面、格下の者に対してはヒステリックに怒鳴りつけ道具としか見ていないような、和彦は好きになれないタイプだった。
「何やってんの。
 まず、お客様のところにいて謝るのが先でしょ。
 小日向さん、リーダーをやっているのに、そんなことできないの?
 冗談じゃないよ。
 そのくらいのこと、普通に考えればわかるでしょ。
 これで、お客様がそっぽを向いてしまったら、どうするの?」
陣内が、和彦を罵倒し始めたのを見て営業の若手が口を挟んだ。
「あの、部長。
 小日向さんには、名前を貸してもらっただけで……。」
「何言ってるの。
 名前を貸しただけだって?
 名前をお客様に出したら、普通、挨拶に出向くのが当たり前でしょ。
 ひょっとして、小日向さん、挨拶にも行ってないの?
 ちょっと、勘弁してよ。
 ふざけんのもいい加減にしろって!
 どこの世界で、下っ端の人間が胡坐をかいて見ているだけなんだ。
 こっちなんて、営業の売り上げ目標を達成するために、血眼になっているんだぜ。
とんでもねえ、奴だな。」

その時、和彦のスマートフォンのモニターが怒気をはらんでいるように赤く光っていることに和彦をはじめ、誰も気が付かなかった。

「な、なにこいつ!
 マスターを怒鳴りつけやがって!」
「ほんと、こっちの世界だったら撃ってやるのに!」
「私だったら刻んでやる。」
「まあまあ、落ち着いて。」
「ヒトミちゃん、何で落ち着いて…。
 ヒトミちゃん?」
「大丈夫よ。
 後でしこたまウィルスを送り込んでやるから。
 あいつのPCに。
 あいつの顧客データから個人情報まで全部…。
 イッヒッヒッヒッ。」
「…」
「…ヒトミちゃん、顔が怖い…。」

和彦のスマートフォンのモニターが更に激しく点滅しているのを誰も気づいていなかった。
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プロフィール

電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

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