現実への回帰

「もし、今のゲームの進め方にご不満であれば、遠隔操作のロボットがありますので、それを操作され一緒に戦うといのはいかがでしょうか?
 マスター、ご年齢的にも、その方が良いと思います。」
「え?」
和彦は、年齢という言葉を聞いて、はっと我に返った。
(そうだ、浮かれていて忘れたけど、俺、もういい歳なんだよな……)

「小日向さん。」
「はい?」
和彦は会社の机に座っていると、若いエンジニアと営業マンが声をかけてきた。
「今度のプロジェクトの体制図に小日向さんの名前を借ります。」
「え?」
「ああ、名前だけです。
 ユーザー先に提出することになっているんですけど、若手だけだと相手が納得しなくって。」
「なので、小日向さん、年次が古く主任という肩書があるじゃないですか。
なので、一応リーダーとして体制図にのせさせていただきます。」
「いいけど、じゃあ、ご挨拶に行った方が……。」
「そんな心配はありません。
 名前を借りるだけなので、何もしなくて結構です。」
「でも…。」
「結構です!」
何か言おうとする和彦を制して、若い二人は、背を向けて歩き出した。
「全く、何もできないんだから、せめて、名前だけでも使わせてもらわなくっちゃ。」
「そうなの?」
「そうなんだよ。
 もう、もうろく爺いいで、厄介者ったらあらしやしない。」
「ふーん。」
「何もしないで、机に座っててくれればいいんだよ。
 下手に、出てこられるといい迷惑だ。」
「ちがいない。
 ははははは。」
二人は、和彦に聞こえるような声で話していた。
(好きで歳をとった訳じゃないさ……)
和彦は、若い二人の背中を見ながら思った。

「……ター。
マスター?」
「!」
和彦は、エイミーの呼びかける声に我に返った。
見るとエイミーが、泣きそうな顔をしていた。
「マスター、申し訳ございません。
 お気を悪くされたのですね。
 申し訳ございません。」
エイミーは小さくなって深々とお辞儀をする。
「え?
 ああ、年齢のこと?
いいって、いいって。
 ちょっと、考え事をしただけで、気なんて悪くしていないから。」
「でも……。」
なおも泣きそうな顔をしていたエイミーに、和彦は近づき、そっと頭を撫でた。
エイミーの髪からはシャンプーリンスのいい香りがした。
「本当に、気にしなくていいから。」
エイミーは、頭を撫でられびっくりしたのか、顔を赤らめうつむいて呟くように言った。
「マスター、本当に?」
「ああ、本当だ。」
和彦は明るい声で応えた。
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電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

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