誘う女~完全なる降伏

そんな和彦の仕草や視線を無視しているように田中は、近くの綺麗で1階がガラス張りで仲が良く見える建物の中に和彦を招き入れた。
1階は喫茶店のようで、外が良く見え開放感のある広いスペースだった。
そして、田中は和彦を窓際の商談スペースに案内した。
「今、コーヒーをお持ちします。」
珈琲はプラスチックの容器に入っていたが、とてもいい香りがした。
「改めて、ご挨拶をさせていただきます。
 私、インナーブレイン社の田中と申します。
 どうぞよろしくお願いいたします。」
そう言うと、田中は深々とおじぎをして和彦に名刺を渡した。
名刺にはインナーブレイン社営業部主任田中美紀と刷られていた。
美紀が珈琲を和彦に勧めながらインナーブレイン社とはどういう会社かということを説明し始めた。
インナーブレイン社はバーチャルリアリティを開発している会社で、その技術をあらゆる分野で利用できるように政府からも委託されているきちんとした会社で、決して怪しい会社ではないこと、今回、その政府のコンピュータが和彦を選んだことを説明した。

(なんで、政府のコンピューターが俺を選ぶのか?
 俺の個人情報は?
 あっ、この前、アイナンバーの写真付きカードを頼んだからかな。
 まあ、どうでもいいけど、この娘、スタイルいいな。
 まだ、20代だろうに、それなのに主任かぁ。)
田中がいろいろ説明している最中、和彦は美紀を見つめながら漠然と思った。
そして、美紀は、今まさに開発中のバーチャルリアリティのゲームのモニターになってくれと、話しをモニターの件に向けた。
その内容は、バーチャルリアリティの中で、人間はどういう行動をするのか等のサンプルを集めて、今後の開発の参考にしたい、そのために、ゲームという娯楽を提供するので是非参加してほしいと、熱く語っていた。
「いかがでしょうか、小日向様。
 今までのところで、何かご質問はありますか?」
「田中さん、年はいくつですか?」
(うげぇ、俺は何を聞いたんだ。
 初対面の女性に、しかも、一生懸命会社の話をしている娘に向かって…。)
「あっ…、い…や…。」
和彦は、恥ずかしさから顔を赤らめ、しどろもどろになっていた。
「え?
 私ですか?
 28歳になりますが、何か?」
美紀はこともなげに和彦の問いに答えた。
「あ…、いや、若そうに見えたので…。
 若いのに、主任かと感心して…。
 すっ、すみません。」
「まあ、ありがとうございます。」
そう言ってクスリと笑った美紀の唇は瑞々しく光って見え、年相応の若さを感じた。

「我が社は、男女関係なく機会を与えてくれるので、やりがいがあるんです。
 では、続けさせていただきます。」
美紀の誠実そうな説明や、一切、お金はかからなく、通信費も掛からないなど、徐々に和彦は前向きに考え始めた。
そして、ダメを押したのが、美紀の持ってきたパンフレットに描かれている女性だった。
その女性は、人間と間違えるようなバーチャル技術で作られたものと美紀は説明したが、どこか、和彦の昔の初恋相手に似ており、見れば見るほど甘酸っぱい気持ちがこみ上げてきた。
こういう女性がゲームに出てくるという一言で、和彦はモニターになることを承諾した。
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電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

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