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誘われる男

和彦は、アパートに一人暮らしだった。
両親は、すでに亡くなり、長年連れ添っていた妻からは三行半を付けられたうえ、その元妻に高額の慰謝料を請求され、それを払うために働いているようなもので楽しみも何もなかった。
その日、アパートに帰ると宅配ボックスに和彦宛ての大きな荷物が届いていた。
「なんだろう?」
和彦は、無雑作にその荷物を部屋に運び、差出人を確認した。
「インナーブレイン社?
 ああ、この前、モニター契約を結んだ会社だな。
 これがその機械か。」

和彦は、この前の休みの日、いつもは部屋に引きこもりインターネットで漠然といろいろなサイトを見て時間を潰しているだけなのだが、あまりに天気が良かったので、珍しく家を出て、いろいろなゲーム売っている電気街にぶらりと出かけていた。
天気だけではなく、その数日前に、インナーブレイン社という会社からモニター募集のハガキを受取り、ハガキには、和彦がコンピュータに選ばれたので、是非、モニターになってもらいたいという内容が書かれていた。
ほぼ100%と言っていいほど、その手のハガキは客寄せでキャッチセールスの様なものなので無視して捨てていたが、なぜか、そのハガキにイラストで描かれている女性の絵が気に入ったので行ってみることにしたのだった。
「どうせ、勧誘だろうから、何か言われたらお金がないって断ればいいさ。
 まっ、お金がないのは本当のことだけど。」

和彦は、ほとんど自分でゲームをやったことがないのだが、人がやっているゲームを見るのが面白かった。
『太鼓の超人』というゲームで、人に見せるためオーバーアクションでゲームに興じている若者を見て、思わず感心していると、どこからか声をかけられた。
「小日向さん?
 小日向和彦さんですよね?」
和彦が声の方を振り返ると、若いスーツ姿の女性の会社員がにこやかな顔で立っていた。
その女性は健康的な色気があり、笑顔が好印象だった。
「はい、そうですが。
 どこかで、お会いしましたか?」
和彦は、なぜ自分の名前を知っているのか不思議に思った。
「はい。
 あっ、いいえですね。
 私、小日向様にお手紙を差し上げたインナーブレイン社の田中と申します。」
そう言うと田中と名乗った女性は軽く会釈した。
「あ、君がそうなの。」
「はい。
 わざわざお越しいただきありがとうございます。
 我が社がどこにあるか、迷われたら行けないと思いまして、外でお待ちしておりました。
 ここで立ち話は失礼かと思いますので……。」
(ほら、来た。
 オフィスに連れ込んで、あれ買え、これ買えと大勢で囲んで脅す気だろう。
 でも、何で僕だってわかったんだろう?)
和彦は、そう思いながら身構えた。

「…で、オフィスの1階に広い談話室がございますので、そちらでお話させていただけますか。」
「え?
 ああ、いいよ。」
和彦は自分が思っていたのと違うことを言われたので、少し警戒心を解いて返事をした。
そして、田中は少し離れた真新しい綺麗なビルに和彦を連れて行った。
傍でよく見ると田中は、和彦よりも小柄だったが、若々しく、胸が大きく、腰はくびれ、ぴっちりしたスカートから形のいいお尻のシルエットが見事だった。
また、スタイルだけではなく、ショートヘアの黒髪、顔は丸顔の小顔で黒縁のメガネが理知的で、今評判の女優に似ている美人だった。
また、何の香水をつけているか、ほのかな甘い花の匂いがして、和彦は思わずその匂いを嗅ぐように、田中の後ろで深く息を吸い込んだ。
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プロフィール

電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
エロ、グロ、怖いのは苦手。
時代劇や明るくちょっとエッチなSF好きのコンピュータエンジニアです。
どこかで読んだこと、見たことがある?
そんなことも随所に出て来るかと思いますが、それもお楽しみとして。
あくまでもオリジナル小説を目指します。

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