にゃんにゃん?

「ま~す~た~!」
スピーカーからターニャの気のない声が流れてきた。
ターニャは、和彦の指示がなかなか来なかったので、焦れているようだった。
「あ、ごめん、ごめん。
 ターニャ、右前に大きな岩があるだろう。
 その岩陰に隠れ、ゴブリンに見つからないように、近づくまで待つんだ。」
「了解しました。マスター。」
ターニャは、身を翻し、プラチナブロンドの髪をなびかせ、岩陰に潜り込んだ。

暫くして銃の破壊力のパーセントが100を差した。
ターニャが潜んでいるところからゴブリンまで50mくらいの距離だった。
「マスター?」
「まだ、もう少し引き付けよう。
 エネルギー充填120%ってとこかな。」
「え?」
ターニャは何を言ているのかわかりませんと言うように聞き直そうとした。
「い、いや、何でもない。
 (そこ、食いつかないで…)
 ターニャ、敵は横に展開しているけど、3発で仕留めるからな。」
エイミーは直ぐに頭を切り替えていた。
「はい、マスター。」
ターニャは、低い声で答えた。
そしてゴブリンが、20mくらいに近づいてきて、ターニャのところから、ゴブリンは大きくはっきりと見える距離になっていた。

「狙いは?」
「すべてロックオン出来てます、マスター。」
「よし!
ターニャ、GO!」
和彦の号令で、ターニャは勢いよく岩陰から飛び出すと、目と鼻の先にいるゴブリン3体に正確に連続して1発ずつ命中させていった。
弾丸を受けたゴブリンはその場で霧散し、モニターの金貨マークのところがカウントアップされていった。

「敵を仕留めると消えて金貨に変わり、加算され蓄えられます。
 それで、市場で色々なものが買えますよ。」
「そうなんだ。
 で、為替レートは?」
「あとで、市場に行きましょう。」
エイミーは、和彦の問いかけを気持ちよく聞き流した。

(でも、さっきの“にゃんにゃん”ポーズといい、今の焦れたような言い方…。
 プログラムには確か無かったわ。
 どこで、憶えたのかしら。
 特に、“にゃんにゃん”ポーズなんて、確かこんなポーズを…。)
「…ミー。
 エイミー?
 エイミーさん?」
考え込んでいたエイミーに和彦の呼ぶ声が聞えた。
「あ!!
 マスター、すみません。
 にゃんにゃん♪」
そう言って、エイミーは恥ずかしそうな顔をしながら思わず招き猫のようなポーズをとって見せた。
「え?」
「きゃ、やだ、そのこれには…。」
エイミーは“にゃんにゃん”ポーズのことを考えていたところにいきなり声をかけられたので思わずポーズをとってしまい、あまりの恥ずかしさから真っ赤になってうつむいてしまった。
和彦は、何が起きたのかとあ然としてエイミーを凝視していた。
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近っ!

そうこう話しているうちに、レーダーのゴブリンがターニャに近づいてきていた。
「マスター、ゴブリンが線の中に入って来ましたので、モニターを広範囲にすると、全体が見渡せます。」
「わかった。」
和彦はモニターに指を広げる仕草をして、尺度を大きくした。
モニターはより高度なところから映し出しているように、ゴブリンとターニャを映し出していた。

ゴブリンは器用に岩から岩に飛び移り、ターニャに気づかれないように近づいていた。
「ターニャ、右前方にゴブリンがいるけど見えないか?」
「はい、マスター。
 ここからだと岩が邪魔して見えません。」
「少し左に寄って、今言った方向を見て。
 そうすると、見えてくるはずだから。」
「はい、マスター。」
ターニャは、感情のない声で答え、和彦に言われたとおり左に寄った。

「マスター、少し遠いいですが見えました。」
「じゃあ、打ち方用意して。」
「はい、マスター。」
そう言うとターニャは腰を落とし、シューティングポーズを構えた。

「マスター、ターニャのアタックポイントに注意してくださいね。
 今回は回復のアイテムも、回復系の仲間もいませんので、無駄玉を撃たせると、最後まで持ちませんよ。
 それに、あまり遠くだと、威力が落ちます。」
「なるほど。」
モニターを見ると、ターニャの持つ銃のところにパーセントが表示され、それが、ゴブリンが近づけば近づくほど大きくなっていった。

「その数字が100で、100%の破壊力を出します。
 今だと、50を切っていますね。
 今撃っても、ダメージはそんなに与えられません。
 もう少し待った方が良いです。」
エイミーが横からアドバイスした。
「…。」
和彦は背中に柔らかいものが触れるのを感じた。
エイミーは、和彦にアドバイスするのに夢中になって、和彦の背中に自分の胸が触れているのに気づかなかったらしい。
そして、エイミーは同じようにモニターに覗き込んで来ているので顔が和彦の顔のすぐ横に来ていた。
(エイミーって、肌がきれいだな。
 それに温かく、胸も柔らかく、そして、なんていい香り…)
和彦は横目でエイミーの横顔を見て目を細めた。
「あっ!
 マスター、ごめんなさい。
 お邪魔でしたね。」
エイミーは和彦に近づき過ぎているのを認識してか、そう言って、和彦から少し離れた。
(え?
 い、いや、そんなことないんだけどな。)
和彦はそんなことを口に出すことが出来ず、情けない顔をしていた。

あなたの思いのまま

「マスター、あと、ターニャにゆっくり歩けとか、走れとか言えば、その通りに動きます。
 また、このステージは大きな岩がありますので、右に回れとか左に回れとか、自分で判断し回避しろとか指示をしてください。」
「え?
 障害物の回避方法も指示するのか?」
「そうですよ。
 自動回避で、回避したほうに敵がいたらどうしますか?」
「そういうものなのか。
 自動回避って言うからてっきり、敵についても自動的に回避するのかと思った…。」
和彦は何かを考え悪戯っぽく笑った。
「じゃあ、にゃんにゃんポーズをしろと言ったらやるの?」
「マスター!」
エイミーは少し非難するような顔で言った。
「冗談だって、冗談…?!
 あっ、ターニャ、やらなくていいから!!」
モニターを見ると、ターニャが片手を上げ招き猫のポーズをしようとしたので、和彦は慌てて制止させた。
「マスター、悪趣味ですよ。」
エイミーがとどめを刺すように言った。
「ごめんなさい。」
和彦は、肩を落として心から反省した態度を見せたので、エイミーは和彦にわからないように顔を崩して笑った。

「じゃあ、ターニャ。
 そのままの速度で、障害物は自動回避して。」
「了解しました。マスター。」
ターニャが進み始めると、すぐに、レーダーに赤い点が映し出された。
赤い点は3つで、おのおの『ゴブリン』と書かれた吹き出しが表示されていた。
「マスター、その吹き出しにタッチしてください。」
「こう?」
和彦がエイミーに言われたように『ゴブリン』を書かれた吹き出しをタッチすると、ゴブリンの説明が書かれたサブ画面が表示された。
サブ画面には、ゴブリンの全身イメージ、くるくるパーマのがっちりした体格の原始人が棍棒を持っている姿を映し出していた。
そのイメージの横には、LP(LifePoint)、AP(AttacPoint)、攻撃力、攻撃技などの情報が表示されていた。

また、その画面の横に『対ターニャ』のボタンがあったので、和彦はボタンをクリックしてみた。
すると、ゴブリンの数値が掛かれている横に対比のようにターニャの数値が現れ、まるで比較しているようだった。
「それは、ターニャと今回戦うゴブリンとの性能比較です。
数字が赤い方が弱いと思ってください。」
エイミーの言う通り、数値はゴブリンの方がすべて赤だった。
「ただし、注意してくださいね。
 これは、1対1での数値です。
 多勢に無勢の場合は、当てにできませんから、なるべく1対1で戦わせるようにしてください。」

ターニャ、行きます!

和彦はターニャが通ったところから、若い女性が良くつけるようなコロンの甘い匂いを感じ、ついうっとりとしていた。
(こんなにワクワクする香りは、何年ぶりだ…。)
エイミーは“コホン”と咳払いをした。
「マスター、利用承諾書。
 決して、ゲームに出てくるものに、みだらな行為はしないでくださいね。」
和彦の鼻の下が伸びたような顔を見て、エイミーが苦笑いしながら釘を刺した。
「あっ、いや、そんな……。」
和彦は痛いところを突かれたかのように狼狽した。

数秒後にモニターがターニャを映し出した。
場所は、ごつごつした岩が転がっている平地のようなところに、ターニャがたたずんでいた。
ターニャは、部屋にいた時と異なり、後ろで髪を結わき、パーカーの様な上着を着て、凛とした顔立ちになっていた。
また、コマンダールームの時はなかったヘッドホンのようなものを首にかけていた。
「あれ?」
和彦は一早くそのヘッドホンを見つけた。
(これは、狙撃など集中力が必要な時に、雑音を封じるために使うものです。)
また、どこからか声が聞えた。
「あ、そう。」
和彦も、その声にだんだんと慣れてきたようだった。

ターニャが映っているモニターの横にレーダーのような地図が移っている画面が表示され、どこに進んでいくかガイドが出ていた。
「マスター、レーダーは動けるエリアを映し出しています。
 進んでいる方向は矢印で表されています。
 また、上から見た人形、『ターニャ』と吹き出しが付いているのが映っていると思います。
 その顔の向きが、ターニャの向いている方向です。
 ですので、真っ直ぐとか右左は、ターニャの顔の向きで指示してください。
 ということで、マスター、そのマイクでターニャに進む方向を指示してください。」
「え?
 僕が?」
「はい。
 このゲームは、マスターの指示の元、動いていきます。」
「わかった。
 ターニャ、聞こえるか。」
和彦は目の前のマイクに向かって話しかけた。
「はい、マスター。」
ターニャの若々しいはっきりした声が目の前のスピーカーから聞こえた。
「じゃあ、真っ直ぐ進んで。」
「はい。」
ターニャは返事をし、歩み始めた。

おまけ
この絵の元になった絵師さんの絵、素敵です。
一目惚れです。
画才の無い私が手本を元に作成しました。
いつか、私のブログに絵を提供して頂けますように頑張ります。
エイミー

ターニャは『水』

「さて、説明が長くなりましたが、このダンジョンに出てくる敵は、アーミーとゴブリンの弱小レベルなので、練習には持ってこいかと思います。
それでは、お待たせしました。
 まずは、実戦で。」
そういうと、エイミーは書棚から1冊の大きな本を手に取り、机の上であるページを開いて見せた。
開いたページは見たこともない世界の地図が描かれていた。
そのページの下の方の小さな島のところが明るく光っていた。
「では、ここに。」
エイミーがそう言って指をさした島に、和彦はその部分に引きこまれる感じがした。

「マスター?」
和彦はエイミーの声に目を開けると、どこか見たことのあるような海岸沿いの市場に立っていた。
その市場は、盛況なのか人がたくさん集まっていた。
「このダンジョンは、腕試し島、トレファー島の攻略です。
 練習用のステージが用意されていて、そのステージをクリアして頂きます。
 今回は、初級のステージ1からステージ5までを挑戦して頂きます。
 各ステージでは、敵を撃破し、最後にボスキャラを撃破することで、クリアーとなります。
 敵キャラはボスキャラ含め、アーミーとゴブリン。
 両方とも、ターニャより下ですね。
 油断しなければ、楽勝ってやつです。
 敵属性は『火』、ターニャは『水』ですから、その属性も優位です。」

「火?水?属性?」
「ええ、このゲームの中に出てくるものは、皆、属性として『風』『水』『火』のいずれかを持っています。
『風』は『水』より強く、『水』は『火』より強く、『火』は『風』より強い設定になっています。
同じ属性が相手なら攻撃にプラスマイナスはありませんが、敵より優位な属性だと、攻撃に何パーセントか加算されることになります。逆に敵が優位な属性だと、こちらの攻撃が何パーセントか弱くなりますので、ご注意願います。」
「そうなんだ。」
「では、この市場の一角にコマンダールームがありますので、そちらに移動しましょう。」

そう言うと、和彦は体が浮いた感覚がして、いきなり目の前の風景が変わり、ロケット打ち上げで使うコントロールセンターの一室に似た部屋に瞬間移動していた。
「マスターは、ここからターニャに作戦指示を出します。
 そのレーダーに敵が映ります。
 また、ターニャのいるところの映像が、そこの画面に映し出されます。
 ですので、敵の種類、位置から、ターニャに攻撃指示をしてください。
 じゃあ、ターニャ!」
「はい。」
ターニャが無表情に答える。
「ステージ1へ!」
エイミーが、指示すると、ターニャは硬い表情で頷きステージ1と書かれたドアに近づくと、自動的にドアが開き、その開いたドアをくぐりコマンダールームから出て行った。
プロフィール

電脳子猫@委員会

Author:電脳子猫@委員会
どこかで読んだこと、見たことがある?
いえいえ、オリジナル小説です。
明るく楽しく、すこしH(エッチ)で楽しい物語りを目指します。
よろしくお願いします。

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